ZORN『My Life』は聞かずに死ぬのもったいない。

 

今回は、私がZORNにハマるきっかけとなった1曲、『My Life』について解説していきたいと思います。

※爆泣必至の為、ティッシュかハンカチをご用意ください。

 

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J-HIPHOP界の歴史に残る1曲『My Life』

 

「ヒップホップ」と聞くと、皆さんはどういうイメージをお持ちでしょうか。

 

「俺はヒップホップ生まれヒップホップ育ち 悪そうな奴は大体友達」

とか

「金!女!大麻!ヒャッホイ!!!」

とかそんな感じをイメージする方が多いのではないでしょうか。

 

最近のヒップホップを聞いている方はむしろそんなイメージを持たれていない方もいらっしゃるとは思いますが、少なくとも私が中学生くらいの頃までは、そういったステレオタイプのラッパーが多かったような気がします。

 

ヒップホップの基本がセルフボースティング(自分を誇らしげに表現すること)である以上、そういった曲が多くなるのはある種必然とも言えます。

 

そんな中、「ありのままを包み隠さず曲で表現し、そんなありのままの自分を誇る」というスタンスをJ-HIPHOP界に持ち込み浸透させたのは、何を隠そうZORNの『My Life』ではないかと思っています。

(もちろん、昔もそういうラッパーはいましたが、今ほど市民権を得られていなかったスタンスだと思います)

 

ZORNは『My Life』において、1番で「仕事」、2番で「家庭」、3番で「ラッパーとしての自分」を歌っています。

 

ZORNは週6で叔父が経営する塗装工の現場仕事をしていますが、それこそ一昔前は、ラッパーが仕事について歌うってことは恥ずかしいことである、的な文化がありました。「ラップで飯食えないなんてラッパーじゃない。ラップで稼いで飯食ってこそかっこいいラッパーだ」という考えが根強かったからです。

 

そんな中で、仕事や家庭を歌うっていうことは、「ありのままの自分を肯定する、最大のセルフボースティングであり、それこそがヒップホップである」という表明でもあったわけです。かっこよすぎますね。鼻血が出ます。(出ました。)

 

だからこそZORNはとあるインタビューで、「サラリーマンが1番サバイブしていると思う。自分の為に、家族の為に、毎日乗りたくもない満員電車に揺られ、下げたくもない頭を下げ、それでも歯を食いしばって毎日を生きているのがかっこいい。」という旨の発言をしています。

 

これには私も食らいました。大学生の時にこのインタビューを読みましたが、社会人になり、余計にこの言葉が身に沁みるようになりましたし、父親と母親に本当の意味で感謝ができるようにもなりました。

 

私の価値観や人格を形成するのに、ZORNは影響を多分に与えてくれました。

 

ありのままの『My Life』を歌う ーリリック解説

 

繰り返しの生活〔ea〕

目をこすり開ける玄関〔ea〕

朝から晩〔aaaaan〕

ただ働く〔aaaaau〕

月から土までまた変わらず〔aaaaau〕

いつも汚れた作業着〔aooi〕

一服するタバコと缶コーヒー〔aooi〕

思い通りにいかぬ日常に〔iiooi〕

ふて腐れに似た憤り〔iiooi〕

また言い聞かす これはまだ序章〔ou〕

高く飛び上がるためにある助走〔ou〕

昼休憩は嫁の弁当〔ou〕

俺より朝早くありがとう〔ou〕

冬は寒い〔aii〕 夏は暑い〔aii〕

それでも夕焼けは素晴らしい〔aii〕

地味で泥臭い毎日〔aiii〕

実家で野菜もらう帰り道〔aeiii〕

 

(※hook 1)

大体〔aiai〕こんなもんさMy Life〔aiai〕

昨日も今日もまぁ変わりない〔aiai〕

何にも良いことなんてない〔ai〕

でも言葉に〔ai〕できない〔ai〕謝に愛〔aiai〕

信じたいものを信じたい〔iai〕

守りたいものを守りたい〔iai〕

題名なんてついてない日〔eaii〕

握る小さな手とMIC〔eaii〕

 

先ほど説明した通り、1番は「仕事」をテーマに歌っています。曲として聞かずに詩として読んでも、情景や状況が鮮明に浮かぶ程にリアルを歌っていますね。

 

私的に感動するポイントがあって、ZORNは過去記事でも書いているように、かなりスキルフルなラッパーなんですね。長くて固い韻なんていくらでも踏めますし、それでいてきっちり意味を通すことができる稀有なスキルの持ち主です。

 

そんなZORNが、そこまで長く固い韻を入れてきていないんです。もちろん、「朝から晩」→「ただ働く」→「また変わらず」とかは流石のスキルなんですけど、そのスキルをこれ見よがしに発揮しようという印象を受けません。

 

この『My Life』という曲は、「韻がどうこう、フローがどうこうよりももっと大事なものがある」という思いが込められた1曲のような気がします。

 

むしろ、韻を踏み倒さなくたって人の心に届くリリックが書けるなら、それは立派なラッパーとしてのスキルですしね。

 

繰り返しの生活〔ea〕

くたくたで開ける玄関〔ea〕

娘たちの声「おかえり」〔oaei〕

あったかいご飯 またおかわり〔oaai〕

テレビを消して話をしよう

学校のこと〔oo〕 保育園のこと〔oo〕

誰が好きとか〔oa〕 何が嫌とか〔oa〕

将来は何になりたいとか〔oa〕

誕生日に手紙をくれたな〔ueaa〕

下手な似顔絵もくれたな〔ueaa〕

どうもありがとう〔ouoaiao〕

本当ありがとう〔onoaiao〕

別に悪くない 今日も明日も〔ouoaiao〕

「お前らの為」とは思わねぇ〔oae〕

そうじゃなくて「お前らのおかげ〔oae〕

なんつーか〔uua〕 生きる意味を痛感〔uua〕

心が揺さぶられる瞬間〔una〕

 

(※hook 1)

 

2番は「家庭」についてですね。1番に続き、ありふれた父親としての自分をありのままに歌っています。

 

ZORNには3人の娘がいます。ちなみに上の2人の娘は奥さんの連れ子ですが、これについては『Letter』というこれもまた爆泣必至の曲で歌っていますので近々記事にします。

 

なんかもう全部パンチラインですよね。

「「お前らの為」とは思わねぇ そうじゃなくて「お前らのおかげ」」

っていつか奥さんや子どもができたら言ってあげたいし、そういう謙虚さと感謝を常に持てるような人間でありたいと思います。

 

繰り返しの生活〔ea〕

カッコつけ開ける玄関〔ea〕

いつもと同じWay〔ue〕

でも行き先はステージの上〔ue〕

金ピカのチェーンなんて持ってない〔oeai〕

高級車にだって乗ってない〔oeai〕

でもここに誇り持ってたい〔oeai〕

少年のよう夢を追ってたい〔oeai〕

踏んだり蹴ったり散々な目〔ananae〕

諦めることは簡単だぜ〔ananae〕

ガンガン前〔ananae〕 人生1回〔eiai〕

生きていたい〔eiai〕 ただ精一杯〔eiai〕

60Wの栄光さ〔eioua〕

全然金なくても成功者〔eioua〕

一本〔io〕道を行こう〔io〕

洗濯物干すのもHIPHOP〔io〕

 

(hook 2)

大体〔aiai〕こんなもんさMy Life〔aiai〕

昨日も今日もまぁ変わりない〔aiai〕

何にも良いことなんてない〔ai〕

でも言葉に〔ai〕できない〔ai〕謝に愛〔aiai〕

歌いたいことを歌いたい〔aiai〕

伝えたいことを伝えたい〔ai〕

題名なんてついてない日〔eai

握る小さな手とMIC〔eai

 

笑おう〔aaou〕 ほんのひと時を〔iooio〕 

咲かそう〔aaou〕 日々に彩りを〔iooio〕

鳴らそう〔aaou〕 好きな音楽を

上がろう〔aaou〕 上がろう〔aaou〕

今週日曜〔iiou〕どこに行こう〔iiou〕

その日のため6日を生きよう〔iiou〕

誰かの幸を願えたら〔eaa

きっともうこれ以上はねぇんだな〔eaa

 

3番は「ラッパーとしての自分」を歌います。

 

この曲の構成ってすごく良くできていると思っていて、私みたいなサラリーマンのように「仕事」も取り組んでいるし、「家庭」も持っている。それを人生のベースとしつつ、それでも自分の夢を追い続けることの意味・大切さを説いているような気がします。

 

家族の為に歯を食いしばって仕事を頑張りながら夢を追うことで、また大切な誰かの幸せも願えるようになる。そしてそれ以上のことなんてないという事に気付ける。

 

こんな素晴らしい曲、聞かずに死ねますか?無理無理。

 

ZORNも「洗濯物干すのもHIPHOP」と言ってますし、そろそろ洗濯でもします。

 

髪切ったらすごく涼しいです。