ZORN『Rep feat. MACCHO』が大変なことになってる。

 

 

記念すべき第1回目は、ZORN『Rep feat. MACCHO』についてご紹介していきたいと思います。

 

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葛飾×横浜の最強タッグ降臨

 

まず曲自体に入る前に、この組合せがヤバい(ヤバい)です。

 

ZORNはそりゃもちろん大好きです。葛飾区で育ち、少年院からMCバトルで名前をあげて音源も出して、般若のようなビッグネームに声をかけてもらって昭和レコードからイケてる音源をバンバン出したと思ったら、「仲間達だけでどこまでできるか挑戦したい」つって独立。もうかっこよすぎます。そりゃ好きになります。好きにならざるを得ません。好きにナラザールスリザリンです。

 

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そこにこのMACCHOと来た。これはブチ上がらずにはいられません。MACCHOは横浜出身でOZROSAURUSのMC。J-HIPHOP界ではレジェンド級の存在。神奈川生まれ神奈川育ちの私は少年期の頃からもれなく食らってました。『ROLLIN'045』とか『Rhyme&Blues』とか一生聞いてました。

 

ここ数年大好きなラッパーが、昔から聞いてた超レジェンドと音源を出したわけですから、もうよだれが止まりません。よだれかけください。

 

 

最強タッグが地元を歌う ーリリック解説

 

(※hook 1)

街を歌い地元をRep〔ioooe〕

どこからでも火を起こせる〔ioooe〕

仲間たちはWeedとコケイン〔ioooe〕

俺はいらねぇBeatよこせ〔ioooe〕

Represent Represent Represent Represent

Represent Represent Represent Represent

街を歌い地元をRep〔ioooe〕

できないラッパー死亡届〔ioooe〕

 

 hookからヤバすぎる(ヤバすぎる)。〔ioooe〕で踏み続けてきっちり意味も通す。「仲間達は違法薬物に手を出したりもしているけど、俺はそういうのはもう卒業した。俺はラッパーだから、そんなものよりBeatがあればいい。自分を育んだ地元を誇れない奴はラッパーとして死んでるぜ。」という感じですね。シビれる。

 

ZORN

バカ丸出しの〔aaauaio〕

やんちゃな13,4,5〔aaauaio〕

歌広〔aio〕でオジロ〔io〕

ラッパーがスーパーヒーロー〔aaauaio〕

変わらずな進路〔aaauaio〕

約何年経ったろう〔auaeaao〕

パクられ〔auae〕刑務所で泣くなんてやだろ〔auaeaao〕

 

いやもう早速ずっと踏んでますね。踏み倒してます。前半は〔aaauaio〕で踏んでからの後半〔auaeaao〕への移行もさすが。リリックの意味も少年院上がりのZORNの口から出るから説得力を持ちます。本曲フィーチャリングのMACCHOのサンプリング(OZROSAURUS『AREA AREA』)をしっかり入れ込んできたりと、かなりリスペクトが伺えるところもいい。

 

 

In My Hood〔iaiu〕

やっぱティンバーランドブーツ〔iaau〕

都会じゃ生まれないいなたいクール〔iaaiu〕

俺を杉山って呼ぶみんながいる〔iaaiu〕

駄菓子屋のおばちゃんも見に来たライブ〔iaaiu〕

黄色い総武線〔iioioue〕

ビートにボールペン〔iioioue〕

一生一直線〔iioioue〕

B-Boyの夢〔iioioue〕

新小岩〔iioi〕から

シンフォニーのステージ〔iioioue〕

娘をリムジンのシートに乗っける〔iioioue〕

ハナから持ってた金じゃ買えないもの〔aeaioo〕

今は三世代で海外旅行〔aiaioo〕

最愛の嫁〔aiaioo〕にもサプライズ〔auaiu〕

Thug Life〔auaiu〕じゃなくHug Life〔auaiu〕

 

ここでもZORNのライムは止まりません。RIP SLYMEとかをイメージしてみると分かりやすいかもしれないですが、

 

「ハデな化 俺と決 夏のパッション Pay Attention」 

 

とかってケツで2文字踏みですよね。これはこれでリズムを産むためのテクニックですので、どちらが優れているとかはないと思っているんですけど、単純に何か言葉で韻を踏もうと思った時に長い言葉で韻を踏めるっていうのは、相当なボキャブラリーがないとできないと思うんですよね。

 

ZORNボキャブラリーの豊富さ・独特さが他のラッパーに対して群を抜いていると思います。意味を通しながら長い言葉で多くの韻を踏み続け、しかも聞き心地がいい、っていうのはなかなか真似できないと思います。

 

(MACCHO)

ち止〔ioa〕ってもまた歩き始める

後ろ〔ioa〕んて見ずあの時から自負〔iu〕

ジロ〔ioe〕ッズ息づく根強く一途〔iu〕

街の〔ioe〕色みてぇなもん土地の一部〔iu〕

 

MACCHOのリリックも、「この人が言うからカッコいい!」というものですね。

 

1990年代からずっとJ-HIPHOPのシーンで活躍し続け、レジェンドであるにもかかわらず現役バリバリで戦ってるからこそ、説得力も人一倍です。「横浜には俺のヘッズがわんさかいて、もはや横浜の一部みてぇなもんだぜ」なんて横浜でMACCHO以外誰も吐けないリリックです。

 

しかも、ZORNとはまた違うライムの手法なのが分かりますでしょうか。

 

ZORNは小節のケツで分かりやすく韻を踏むのに対して、MACCHOの踏み方は変態的です。頭韻と脚韻を織り交ぜて複雑な構成ですが、フローが上手いのでかなり聞きやすいです。アクセントの使い方が絶妙。変態です。

 

MACCHOは何度かLIVEで聞いたことがありますが、LIVEが最もかっこいいラッパーの内の1人だと思います。ただ少し玄人向けというか、ライムもフローも変態的なうまさなので、好き嫌いは分かれる感じがしますね。

 

元〔oo〕暮らすトコ〔oo〕

ルーツ スタイル スタンス無きゃただの音〔oo〕

〔en〕部が〔en〕とか〔en〕なら

ートにとかフローだけ乗せても退

ラマが見えてこねぇんだよ

色んな色のベイスターズキャップ

Assassyn Jeanz ヤンキーが着てた

仲間意識〔aaaiii〕 高まる士気が〔aaauiia〕

昔からイケてたヨコハマのオリジナル〔iia〕

ばあちゃんが言ってた じいちゃんとの出会いは〔ia〕

PX フェンスの向こうのアメリカ〔ia〕

のコーラ中〔aa〕

ーナッツ入れ飲み込む泡〔aa〕

面濁る元にゃ大岡川〔aa〕

 

言ってることがいちいち重く、かっこいいです。

 

ここのラスト4小節の変態的スキルはもう圧巻です。アクセントを持たせたフローでリズムを産む感じはMACCHO特有の歌い方で、聞いててアガります。

 

ちなみに「Assassyn Jeans」ってのはMACCHOがプロデュースしたファッションブランドです。 ベイスターズキャップと自らのブランドを並列させる辺りにも地元を背負って立つ自負とか誇りを感じます。

 

(※hook 2)

街を歌い地元をRep〔ioooe〕

どこからでも火を起こせる〔ioooe〕

仲間たちはSピードにコデイン〔ioooe〕

俺はいらねぇWeedよこせ〔ioooe〕

Represent Represent Represent Represent

Represent Represent Represent Represent

街を歌い地元をRep〔ioooe〕

できないラッパー死亡届〔ioooe〕

 

MACCHOは大麻肯定派なので、ZORNのhookと一部歌詞が入れ替わってます。もちろん韻は同じように踏んだままです。こういうところもオシャレだし、「嘘は歌わない」というHIPHOPのスタイルが出ていてカッコいいです。

 

ZORN

俺の原点はサイファー〔eeaaia〕

あとイケイケな毎夜〔eeaaia〕

地位とか名声やダイヤ〔eeaaia〕

よりも経験が財産〔eeaaia〕

バースに訂正はないな〔eeaaia〕

いつもテメーがライバル〔eeaaia〕

まだ鮮明な会話〔eeaaia〕

いつかぜってーが今〔eeaaia〕

若手 ベテラン 皆もろジェラシー〔iaooeai〕

葛飾区に来な おもてなし〔iaooeai〕する

俺は滝川クリステル〔aiaauiueu〕

でもとしやがマリファナ売りつける〔aiaauiueu〕

 

 

これ全部パンチラインですね。7~9文字で常に踏み続けてもちろん意味も通す。これを1曲通してずっとやり続けているわけです。すごすぎる。

 

「おもてなし」から「滝川クリステル」に持っていく辺りもオシャレ。滝川クリステルもまさか「マリファナ売りつける」で踏まれるとは思っていなかったでしょう。 

 

浜の怪獣はILL〔iu〕 存在に在り方がある

てめぇの身の丈分 媚びず気高くいる〔iu〕

大量にいいの〔iio〕よこせ 俺のツレの分も

別に鼻ちゃん無くてもいい Weed〔iio〕にL

ップごときで人の心動かせる

手に言ってってたレペゼン

いてた程層なモンじゃねぇが

でもしてんだ街 したいものはLOVE

 

アクセント使いがここでもキマってます。「愛してんだ街 返したいものはLOVE」の1行は、この曲の全てが詰まっているような超絶パンチラインです。

 

 

Representとは

 

HIPHOPのスピリットの基本は「セルフボースティング」なんですね。

 

簡単に言うと、「俺はこんなにラップで稼いだんだぜ!」とか「俺のラップかっこいいだろ!」っていうアピールです。この辺は別記事でHIPHOPの歴史とかをまとめようかと思っていますが、HIPHOPは基本的に「俺イケてるだろ」なんです。MCバトルとかダンスバトルはその最たる例として分かりやすいかもしれません。

 

ただ、自分をただ大きく見せればいいのかと言われると、それは違います。等身大の自分より誇張して自分を語る事はダサいです。説得力がありませんし、ハッキリ言って嘘になってしまいますから。説得力を持った形で、自分のかっこよさをアピールするのがイケてるわけですね。

 

んで、「等身大の自分に誇りを持つ」という事は「等身大の自分を形成したもの(=ルーツ)にも敬意を払い誇りを持つ」という事とほぼ同義です。その為、ラッパーは大抵、自分の地元を誇っているわけですね。

 

そういう背景を考えると、少年院からバトルMCを経て一端のアーティストになったZORNが地元を歌っている事自体がとてもかっこいいし、横浜を代表するMACCHOと曲を出してるなんて考えたらもう涙ものです。

 

このブログを書いている今も私のMacBookはビショビショです。拭こうと思ったらティッシュが無かったので買ってきます。